コラム 不貞慰謝料の請求・減額は弁護士にお願いするべきか?

第1 はじめに

不貞慰謝料(配偶者に不倫をされたことによる、慰謝料請求)は、過払金、B型肝炎に続きさまざまな法律事務所が注力している分野です。特に、慰謝料を請求する立場での相談は、当事務所に関しては非常に多いです。

最近では、不貞慰謝料の請求や減額について、無料法律相談を実施している法律事務所も珍しくありません。そのため、「無料法律相談でまずは相場を聞いてみて、弁護士に依頼せず、まずは自分で相手に請求してみよう」と考える方もいるようです。弁護士費用を払うのは、「自分でやってみて、うまくいかなかった時だけ」という方も少なくないようです。

一理ある考え方ですが、果たして、その考えは正しいのでしょうか。以下では、自分で交渉するメリットとデメリットについて、考察していきたいとおもいます。

 

第2 自分で交渉することのメリットとデメリット

1 メリット

まず、自分で交渉する場合、弁護士費用を浮かせられるというメリットがあります。

自分で不貞相手に慰謝料を請求したり、あるいは減額を求めたりして、うまく合意できた場合、  弁護士費用はかかりません。自分で解決できるのであれば、弁護士費用がかからないというメリットあるでしょう。

他方、弁護士に依頼する場合、着手金と報酬金を合わせて少なくとも数十万円はかかります。

慰謝料を的確に見積り不貞相手に確実に支払わせることはもちろん、万が一支払わない場合には裁判や差押さえもできるのであれば、弁護士に依頼する必要はありません

以上から、自分で交渉するメリットは、弁護士費用を払わなくて済む点にあるといえるでしょう。

もっとも、最近は、着手金無料の法律事務所や、分割払いに応じている法律事務所もあるそうです。そのため、弁護士に依頼しても元が取れるという声も少なくありません。

2 デメリット

不貞慰謝料に関し、自分で交渉しようとする方はたくさんいらっしゃいます。しかし、デメリットも少なくなりません。むしろ、当事務所としては、デメリットの方が多いと考えています。その理由は、以下のとおりです。

⑴  自分が思うように不貞相手が動かない

まず、相手はあなたとは対立当事者、つまり「敵」です。あなたの味方ではありませんから、あなたの言いなりになることはまずありません。

例えば、無料法律相談で聞いたとおりの金額を不貞相手に請求したとしましょう。ただ、無料法律相談で聞いたとおりの金額を不貞相手に投げかけても、不貞相手がその額を支払うとは限りません。あくまでも「無料」法律相談である以上、法律相談で得られる弁護士の見通しや助言は、あくまでも一般論に過ぎないことが少なくありません。そのため、実際とは異なる数字を告げられることもあるようです。

実際、他の法律事務所で「これは慰謝料は30万円だ」と言われたものの、当事務所にご依頼いただいた結果、200万円の慰謝料を得られた方もいます。逆に、無料相談で説明された一般論を鵜呑みにして慰謝料を請求したところ、不貞相手が弁護士に依頼して、大幅に減額をされてしまったケースもあります。

また、あなたが不貞慰謝料を請求されている場合、あなたは加害者という立場にあります。その加害者自らの言葉として、怒り落ち込んでいる被害者に対して不貞慰謝料の減額を求めることは、いかに危険なことか予想がつくでしょう。減額を求めるのであれば、法的な根拠が必要であり、何より弁護士の言葉で被害者に説明することが大切です。加害者であるあなたの言葉を被害者に投げても、余計に怒らせたり、請求額の増額を招いたりすることがあります。

まずは自分でやってみたい、もしダメだったら弁護士に依頼しよう、という方もいらっしゃると思いますが、無料相談で得た知識をもとに勝負に出ても、そう簡単には行かないようです。無料法律相談で得られた話を鵜呑みにしないことは、とても大切です。

⑵  トラブルに発展する可能性がある

不貞の被害者と加害者という立場にある以上、お互いに感情の対立があります。そのため、お互いを必要以上に攻撃してしまうことがあります。

不貞慰謝料の被害者といえども、感情に任せて攻撃的な態度をとってはなりません。請求の仕方が乱暴だと、いつのまにか被害者と加害者の立場が入れ替わってしまうこともあります。これまでのご相談を聞いていると、不貞相手に慰謝料を請求しようとしたら警察を呼ばれてトラブルになったり、喧嘩になったりしたことも少なくありません。

特に、証拠の評価は一般の方には難しいところです。証拠が不十分なのに、一か八かで不貞相手に請求したところ、不貞を否定されてしまったというケースが少なくありません。中には、証拠がないのに慰謝料請求をしてきたことで、不当請求であるとか脅しだと言われて問題になることもあります。

お互いに冷静に、加害者と被害者という立場を固定する上でも、弁護士を通した交渉を行う方が無難であるといえるでしょう。

⑶  心理的な負担が大きい

慰謝料を請求する側と、減額を求める立場、双方に言えることですが、相手と交渉することはとてもきついです。特に、減額を求めている立場としては、自分が弱い立場に置かれているのですから相当の精神的負担がかかります。相手に自分の言い分をわかってもらえるか、という心配も決して無視できる話ではありません。弁護士ではないのに、減額を求めていいのだろうか、加害者なのに、減額を求めていいだろうか、という気持ちが湧くのは当然でしょう。

反対に、請求する側の立場としても、不貞相手から受けるストレスはかなりのものです。ただでさせ、配偶者に不貞をされて傷ついているのに、不貞相手が減額を求めたり、言い訳をしたりするのですから、辛いのは当然です。不貞相手に直接交渉をしたところで、不貞相手から出てくる情報は、不貞相手の言い訳がほとんどではないでしょうか。あるいは、不貞相手が嘘をつくかもしれません。請求する立場が常に優位にあるとはいえない、ということをよく認識しましょう。

⑷  次の紛争を起こさないために〜再発防止

当事者同士で終わらせると、どうしても示談書や合意書に不備があることも少なくありません。また、中には書面すら作らず、口約束で終えていることもあるようです。

こうした場合、後日「やっぱり慰謝料が足りない。もっと慰謝料を払って欲しい。」と言われて増額を請求されたり、「あの時の慰謝料は、払いすぎた。払いすぎた分を返せ。」と言われることもあるようです。

当事者同士の交渉では、法的に有効な合意書を作ることが難しいようです。弁護士が力になれるのは、今後の紛争予防です。不貞相手と配偶者が接触や連絡をしないこと、求償権を行使しないこと、そして今後お互いに金銭請求をしないこと等、法的に有効な書面を作るのは、一般の方にはそう簡単ではありません。

 

第3 まとめ

いかがだったでしょうか。

弁護士に依頼することのメリットとデメリット、両方の視点があります。ご自身の置かれている立場を、まずは無料法律相談で聞いてみることも大切です。そこで、弁護士が必要かどうか、よく判断することをお勧めします。

不貞慰謝料は、多くの弁護士が注力しているとおり、弁護士が積極的に力になれる分野といえるでしょう。ぜひ一度、まずは弁護士に相談だけでもしてみてはいかがでしょうか。

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